セミナーレポート:「健康経営の現状と未来」

レポート:ウェルネス・ステーション事業機構セミナー
第1回テーマ「健康経営の現状と未来」
2010/6/23(水)よみうり神戸ホール

<開催概要>

ウェルネス・ステーション事業機構主催のセミナー第1回目は、2010/6/23(水)によみうり神戸ホールにて、テーマ「健康経営の現状と未来」と題して行われました。
当日は、健康経営、健康まちづくりについて関心を持つ方が約50名ほど参加されました。
社員や住民の健康が、企業そして地域の発展につながるということで、非常に関心をもたれた方が多く、講演内容を聞き入っておられました。

[メニュー]

開会のご挨拶
  中原 孚 ウェルネス・ステーション事業機構 理事長
「健康まちづくりウェルネスサイクルプログラム」
  稲葉 昭一 ウェルネス・ステーション事業機構 理事
「見せる化経営」
  辻村忠善 TdWs株式会社
基調講演「健康経営の現状と未来」
  安倍孝治 ワールド健康保険組合 専務理事、NPO法人健康経営研究会 副理事長

開会のご挨拶「データに基づく新発想 健康まちづくりを目指そう」

中原 孚 ウェルネス・ステーション事業機構 理事長

●「幸齢化社会」を実現するための「健康まちづくり」

中原理事長 セミナー開催にあたり、ウェルネス・ステーション事業機構の理事長である中原より、参加者への御礼のご挨拶とNPO設立に至った経緯について説明が行われた。
ウェルネス・ステーション事業機構は、官民連携による政策支援を行い、地域のコミュニティ復活を目指していくことを目的として活動を開始し、特定健診・特定保健指導の義務化に対する支援サービスを普及、啓発、提供する目的でNPOとして設立。
現在は、誰もが健康で幸せに齢を重ねてゆける社会、「幸齢化社会」の実現のために活動を展開中。
また、コンピュータを意識せずにICTが活用できる仕組みづくり、さらには、健康コミュニティづくりを通じて、地域の発展を実現することにも取り組んでいるとのこと。
そうした取り組みの中で、幸せに生きて、医療費もかからず、本人も幸せで、長く生きることを実現するために、NPOはウェルネスサイクルプログラムを提唱。
プログラムの内容としては、特定健診・特定保健指導のための健診支援。運動支援。サプリメント支援。さらには個人の健康管理に役立つマイページサービスなどがあり、そういったものを活用して、健康を維持しながら、幸せなコミュニティとしての健康まちづくりを進める事業を展開しているとのこと。

●日本の少子高齢化の対策は、諸外国の手本となるか

少子高齢化について、日本人口の年齢別の推移を実際のデータを見ながら説明が行われ、2006年以降人口が減少し、さらに平均寿命が延び、高齢化が進む。しかも、その現象は他の国々と比較しても非常に短期間で起こっていると説明。
こうした状況の中、社会的インフラをはじめとする様々な整備が急務であり、世界の国々、特に今後急速に高齢化が進むアジア諸国は、日本の少子高齢化対策に対する取り組みに注目が集まっているのだという。
日本は、この少子高齢化に対する取り組みが成功することができれば、ビジネスモデル化して海外に展開できるのではないかと提言。
しかし、年金制度や医療費などの問題が山積しており、特に医療費は、一人当たりの生涯の医療費が2007年で2,200万円かかるといわれ、そのうち、約50%弱が70歳以上になって使われるとのこと。
ただし、医療費によって国の財政破綻が懸念されているが、国民所得に対する割合をOECD諸国と比較すると、医療費の割合は低いほうであり破綻するはずがない。それでも平均寿命が延びているのが日本なのだそうです。

●「平均寿命」から「健康寿命」へ

少子高齢化の現状を踏まえ、WHOも提唱している「平均寿命」ではなく「健康寿命」を延ばすことが、これから大切な取り組みなのだと説明。
病院に入院したままだとか、介護の世話になりながら生きるより、健康で幸せに長生きすることがこれからの重要なのだそうです。
そのためには脳年齢や血管年齢、骨年齢、腸年齢という4つの年齢が、健康寿命を左右する大きなものであり、認知症の予防だとか、免疫力を高めることで健康づくりが実現できるとのこと。
ウェルネス・ステーション事業機構は、認知症予防のためのGo/NO-GO理論、免疫力を高めるためのBAANs理論といったプログラムを用意し、健康寿命を延ばすための支援をしていくと、中原理事長。

●ICTによるデータを活用した一人ひとりの健康づくりを目指す

これまで政府が調査や評価などで収集したデータをセキュアな情報環境で統合し、安心して一人ひとりの健康管理に役立つ情報を提供していく取り組みも行っており、さらに、個人と専門指導者双方にとって役立てるために、会員ひとりひとりのデータを「マイデータ」として活用した健康管理に関する情報提供はもちろん、保健師あるいは管理栄養士、薬剤師の方の協力を得ながら、一人ひとりに対して、きめ細やかな健康管理に関するサービスの提供を行っているという。
また、体組成の改善を行うためのBAANs理論や高精度の体組成測定器の利用を促進したり、Go/No-Go理論を使った脳の健康診断を行い、ゲーム感覚で認知症予防が行える「脳ケン」などのサービス提供も行っていくとのこと。

●幸せに年を取る高齢化社会の実現。ICT活用と健康コミュニティのまちづくり

講演風景 ウェルネス・ステーション事業機構は、幸せに年を取る高齢化社会の実現。ICT活用による社会を支える仕組みづくり。健康コミュニティの街づくりを目指すことをミッション、ビジョンとして展開していくという。
しかし、健康づくりも、コミュニティづくりも、他人のお仕着せではなく、住民や社員といった一人ひとりが参加して作っていことがもっと重要であり、一人ひとりの意識改革をしながら、安くて、手軽で、効果が出るやり方をしないと、長く続けることはできないのだと、参加者に訴えかけた。
最後に、ウェルネス・ステーション事業機構は、幸齢化社会とICT活用による安心、安全な健康まちづくりを実現するためのノウハウを持っており、地域、健康保険組合、社員の健康づくりを一緒にやっていきたいと、中原理事長。

▲ ページの上部へ戻る


「健康まちづくりウェルネスサイクルプログラム」

稲葉 昭一 ウェルネス・ステーション事業機構 理事

稲葉理事

中央官庁や医療機関などのネットワークによる事業活動

稲葉理事からは、まずウェルネス・ステーション機構の特徴の紹介。
ウェルネス・ステーション事業機構は、中央官庁との人脈の太いパイプがあり、政策から事業展開ということを常に心がけて、本当に役立つ政策を国、自治体に提案をしているとのこと。
また、医療技術、数理統計処理、情報処理、事業マネジメント、金融マネジメントなどの専門家が集まっており、特に健康指導者をはじめ、健康運動指導士、栄養士、薬剤師、医療機関、運動指導者といった医療の人的ネットワークが特に特長であると稲葉理事。
ウェルネス・ステーション事業機構は、医療データの統合に取り組み、医療と商業を結びつけ、健康による価値を生み出し、金融価値につながるような新しいイノベーションを生み出すための事業創造支援を行っており、これからの医療や健康のあり方ではないかと稲葉理事。
その他にも、個人の健康指導として、データを用いた健康状態を示すような総合指標を、医師の方と研究しているとのこと。

自助、公助、互助によるコミュニティづくり

コミュニティを作るには、自助、公助、互助の3つが相互につながる必要があると稲葉理事。
ウェルネス・ステーション事業機構として、行政、公共、企業団体、個人の方に対する支援を行い、全体の統合運用によって、地域づくりに貢献していくとのこと。
具体的には、安全なデータ保管方式を採用したシステムを用意し、自分の健康管理データを預けられるようにするとともに、人的な医療ネットワークの方々をバーチャルなネットワークに参加していただき、新しい健康支援医療ネットワークを作り、ICTを通して専門家の意見を聞ける環境を提供していくという。
ウェルネス・ステーション事業機構は、こうした取り組みによって、安心・安全の健康まちづくりに寄与していくという。

生涯「歩いて」「話して」「読み書き」「そろばん」できることが健康寿命

講演風景 健康寿命とは、生涯「歩いて」「話して」「読み書き」「そろばん」ができると定義できるという。
そして、「脳」「血管」「骨」「腸」の4つが健康の源であり、これらを日常的に若返らせていくことが大事だと稲葉理事。
最近では、認知症や老人性痴呆の原因が解明されてきており、また心を形成している箇所も特定されてきているとのこと。
その上で、心を意識的に元気にすることができ、脳を動かすことで代謝とか免疫を上げる研究が進んでいるという。
代謝・免疫・筋肉ストレス・心理が遺伝子のスイッチを動かし、代謝を高めるようにスイッチを入れることで、健康寿命を延ばすことにつながるという。

BAANs理論による代謝回路のスイッチを入れて体を活性化

健康寿命を延ばすには、まず自分の体にある代謝回路を刺激する栄養素を取ることであり、その理論はBAANs理論論という。
BAANs理論は、Bio Activating Advanced. Nutrientsという、刺激栄養素をうまく取っていこうということで、英国の陸軍が当時、負傷した方を治すために使っていたのだという。
余分な内臓脂肪を燃やし、体を活性化させる有用な「タンパク質」をどんどん作り出して、細胞の機能を高めることだと稲葉理事。

筋肉のバランスと認知症の関係

信州大学の寺澤先生との研究で、ある筋肉を放っておくと脳の神経が減っていって、認知症になりやすくなるという、脳と筋肉の関係が分かってきたとのこと。
高精度インピーダンス検査を行うと、筋肉ストレスが分かり、このデータを元に、その人にあった運動指導や栄養指導することで、ストレス改善につながるのだという。
検査では体組成である脂肪・水分・骨・筋肉量などが一瞬で測定できるのだという。
自分の体の筋肉や骨の状態を明確にして指導うけることが、健康寿命を延ばすために必要だと稲葉理事。

健康で長生きするための様々なサービス

医療レセプトデータ、介護レセプトデータ、健診データ、検査データ、栄養データ、運動データ、体組成データ、脳反応データ、歩数データ、分析データを統合したデータベースをウェルネス・ステーションは用意しており、健康支援ができるとのこと。
また、全国1200の医療機関のネットワークを持つ健康支援医療ネットワーク協議会の協力のもと、一般健診に対する意識変革の支援をするとともに、健康指導を行う環境を提供していくとのこと。
さらに、服用している薬のことや健康に関して薬剤師の方に電話相談できるサービスも準備しており、マイページサービスにおいては一人ひとりに対する健康に関するメッセージ配信のサービスも計画しているとのこと。
その他にも、脳の健康支援として、音楽、旅行、イベント、セミナー等を開きながら、心に感動を持ってもらえるセラピーガイダンスも計画中だという。

健康が生み出す財政効果

ウェルネス・ステーションが提唱するウェルネスプログラムサイクルを実践して健康になることで大きな財政効果を生み出すという。
シミュレーションでは、50名の方がプログラムを実践した場合、2,116万円なのに対して、実践しない場合は4,200万円かかるという。実に1,513万円の医療費の削減につながるという。
また、将来的にはウェルネス基金を創設し、健康づくりを推進させ、健康を維持する人にインセンティブ付与なども検討しており、地域コミュニティの発展に寄与していきたいと稲葉理事。

医薬、医具。そして医商

医療分野、また医薬の分野、医具の分野は進んできているが、医商の分野が進んでいないと稲葉理事。
医商とは、健康と金融とのインセンティブサービスの融合であり、自分の体を資産として元気に生活しながら収入を得ることができ、社会貢献できるような金融インセンティブサービスを進めていきたいという。

地域の中に健康を「作り」「広め」「活用」する個人・企業・行政の「自助」「互助」「公助」と、新しいまちづくりを進めて行きたいと、稲葉理事。

▲ ページの上部へ戻る


「見せる化経営」

辻村忠善 TdWs株式会社(プロフィール)

辻村代表 辻村氏は、フォーメーションマネジメントという実践的な組織改革手法をベースに「見せる化経営」という概念と手法によって、数々の企業、団体の経営改善と改革に貢献している方で、JIS、JASの規格制定委員、国家試験員としても活躍しているという。

辻村氏は、今回のセミナーのテーマである「健康経営」を社会的に実現していくためには、企業や組織が「見せる化」を実践する体制が必要であるとのこと。

ステークホルダー(利害関係者)の良好な相互関係を築くには説得と納得

企業や組織はステークホルダー、つまり利害関係者の中で成立し、そのバランスの中で継続していくものであり、その点を理解する必要があると辻村氏。
しかし、コンプライアンス経営が重視される昨今では、あまりにも社会的要求が多すぎて、経営側が世間を気にしすぎて、振り回されているように感じるという。
辻村氏は、企業の方と会うたびに、会社という組織がなぜ存在しているのかを質問すると、意外と答えられないことに驚いているという。
つまり、会社の存在意義を理解しなければ、良い会社といわれるために必要なことが何であるかが分からない。
しかも、それらは他人が作ってくれるものではなく、簡単にできることでもないと辻村氏。
辻村氏は、まずS to S、つまり利害関係者と利害関係者の間をしっかり考えることが必要であり、例えば従業員という利害関係者に対して、物事をきちんと見せることで、企業の存在意義を理解するだけでなく、従業員との信頼が生まれ、会社を変えていく源泉になるという。
見せること、つまり見せる化をすることは、社員、ガバメント、家族といったすべての利害関係者と相互理解をするために必要なものであり、「健康経営」を実現していくためにも「見せる化」による「説得」と「納得」が大事であり大前提であると辻村氏。

○見せること=説得と納得。×見えること≠説得と納得。

病院というのは、病気になったときにしか意識しないもので、結構遠い存在であると辻村氏。
病院の評判については、口コミという形で広がっていく。しかし、最近はそれも信用できないという方も増えてきているという。
それは、患者さんが受ける医療行為は、大学や病院、医師会が決めているのに、患者さんの後ろにいる家族とか職場は、お医者さんの技術を気にするし、患者さん自身もその先生がよく知っているものなり、勉強してきたとこで医療行為が決まっていると思っているために、完全に情報のミスマッチがおきてくるという。
このようなことが何処でも存在し、ひとつの情報だけで、利害関係者の意思の疎通ができるというのは、なかなか難しい時代であり、見えていることではなく見せることがとても重要だと辻村氏。

新しい視点からセキュリティシェルを活用

これからは、新しい視点から情報システムの見直しを行い、新しい視点から医療ケアを見直しすことが必要だと辻村氏。
いろいろな利害関係者が関わってきて1対1の契約をしていくと、非常に複雑な組み合わせの組織になり、構造が見えにくくなり、認識のずれが起きるだけでなく、手間とコストがかかる。
こうした問題を解決するために、IDCを使ったセキュリティ環境「セキュリティシェル」によってコンピュータをもっと身近にするような環境を作り、サービスを提供する必要性があると辻村氏。

利害関係者の説得と納得には、見せる化経営というものに取り組むこと

事業目的、企業の目的、会社・組織の存在している理由、そして事業計画。それを実現していくための業務プロセスがあり、そこにマネジメントプロセスがある中で「事業計画」をしっかり見せていくことで会社の中は大きく変わっていくと辻村氏。
「事業計画」を提示し、新しい取り組みについて説得して納得を受けようとする場合に絶対あるのが、会計的に妥当かどうかという判断。それを、それぞれの人が自分の解釈で選べるよう、情報を見せるという感覚で作り上げていかないと、なかなかうまくはいかないとのこと。
ごく当たり前の話であるが、見せるということを前提にすることで、利害関係者間に対して説得と納得が得られるものだと辻村氏。

地域と継続と発展

企業は利益が大事であり、それは地域社会の利益、社員の利益といった、お金だけではない利益というものがしっかりベースにあるのだとのこと。
最近、リーダーシップを発揮する人のバランスがうまく機能していないと思うことが非常に多いと辻村氏。
経済には、内経済と外経済があり、生活の場としての内経済と、その内経済を良くするために外から人なり、お金なりを持ってくるという外経済の動きがあり、そういうときにリーダーシップをしっかり発揮し発展させていく人が必要なのだとのこと。
住民全体のシンクロナイズド・モチベーションと英語で言うが、同期して動機を得ることが大事だと辻村氏。
モチベーションというキーワードは一時期もてはやされたが、しっかりと分かり合ってやっていくということ。自分の立場、立ち居地、どちらに役に立てばいいのか、を理解し行動すべきなのだという。
こうしたことをベースに健康経営を考えると、人が健康で、地域が健康になるためには、そこに関係してくる組織の健康状態が非常に大事なることから、その健康状態をしっかり自分たちが取り組んでいくのだということで見せることが必要なのだと辻村氏。


▲ ページの上部へ戻る


基調講演「健康経営の現状と未来」

安倍孝治 ワールド健康保険組合 専務理事、NPO法人健康経営研究会 副理事長(プロフィール)

安倍専務理事 安倍氏は、健康と経営は結びついているという、健康経営の考え方を早くから提唱し、会社と一緒の健康づくりに取り組み、最小の費用で最高のサービスという理念を実践。ワールド健保で非常に大きな実績を上げ、平成20年4月からスタートしました国保の特定健診・特定保健指導の実施についても尽力された。
健康経営の考え方を広く普及し、企業の経営者をはじめ、健保組合の担当者の方々を支援する活動として、NPO法人 健康経営研究会の副理事長もされている。

ヘルシーカンパニーからヘルシーシティ。そしてヘルシージャパンへ。

安倍氏は、社員一人ひとりが健康で元気に仕事ができる「ヘルシーカンパニー」を進めていく中で、社員を支えてくれる家族も元気であることが大切であるという。
そして、家族の方の健診については、がん検診など行政が行っているということから、地域と連携する必要性があり、そこで「ヘルシーシティ」の運動につながっていったそうです。
「ヘルシーシティ」という健康に関する地域の活動がひとつのモデルとして、全国に広がれば「ヘルシージャパン」になっていくと、将来構想について話をされる安倍氏。
企業、地域での健康づくりを全国に広めたいとの思いから、NPO健康経営研究会を立ち上げ活動を進めていく中で仲間と議論し、「健康経営」という言葉を作り出したという。

健康と経営が結びついている。

健康経営研究会は、次のようなミッションのもと、全国に健康づくりを広めていく活動を展開しているという。
----------------------
企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できるとの基盤に立ち、健康管理を経営的視点からとらえて、戦略的に従業員の健康づくりを実践する経営手法のこと。

1.従業員の健康管理・健康づくりの推進は、単に医療費という経費の節減のみならず、生産性の向上、従業員の創造性の向上、企業イメージの向上等の効果が得られ、かつ企業におけるリスクマネジメントとしても重要である。
2.健保という組織の経営的魅力(投資対健康)を認識しマネジメントする。健康ということだけでなく、組織マネジメントをする。
3.健康分野に優秀な人材を投入する。
4.社員の健康が企業業績に加えCSRも含めた企業イメージ向上にもなると考えて取り組む。

従業員の健康管理者は経営者であります。「健康経営」の実現に向けて最も影響力を持つのは経営者です。その指導力の元、健康管理を組織戦略に則って展開することがこれからの企業経営にとってますます重要になっていくものと考えられる。
----------------------
つまり、健康と経営が結びついていることだと、安倍氏。
また、健康経営研究会ホームページには、安倍ダイアリー(http://kenkokeiei.jp/abe's_diary.html)があり、活動内容や趣味の話などが掲載されている。アットホームな感じで話を読み進めることができ、安倍氏の人柄が出ており、読みやすいので、興味のある方はぜひ一読されてはいかがでしょうか。

ヘルシーカンパニー:健康経営の現状と課題

健康と経営は大事だと理解しても、健康管理は個人の問題とおっしゃる方もいらっしゃいますが果たして個人の問題だといえる状況であった?といえるような仕事の仕方になっているのか。長時間労働であったり、職場の作業環境に問題がある場合、どうやって社員が自身で健康を保つことができるのか。どのようにして社員が元気で生き生きと仕事をし生産性を上げていくのかということが「健康経営」を進める上での課題であり経営者として大切な仕事であるという。
有給休暇の消化率などから健康管理、経営管理に結びつく指標を確認するということも必要なのだそうです。

安倍氏は、書籍「The Healthy Company:A Human Resource Approach(Robert H.Rosen著:米国)」の一部を引用し、ヘルシーカンパニーの紹介をされた。
----------------------
ここでは、従業員の心身のストレスを生み出すマネジメントのあり方にメスを入れている。
----------------------
組織や仕事から発生するストレスが従業員に与える影響、取り去った場合の効果など、個人の健康増進と業績向上を図るための哲学や現実的な方策について、主要米国企業200社の事例をもとに分析を実証しながら、ストレス克服へのノウハウを説明し、組織開発や人的資源開発、人事、福利厚生面に新しい視点を導入したのである。従業員の健康に、労働環境とか、いろんなものが影響するということが書かれており、経営者が健康に配慮すると、社員は健康になるとのことで、安倍氏のバイブルであるという。

健康が経営に与える影響を察すること

産業医(社員50名以上の場合必要):健康経営だけでなく、リスクマネジメント、コンプライアンスという側面からも産業医の先生は必要。先生の資質も大事。
衛生管理者(社員50名以上の場合必要):健康と経営を結びつけていくには、非常に大事なステークホルダー。
安全衛生委員会:会社側は月1回開催する義務。労災問題のリスク対策においても重要。
特定健診・特定保健指導と企業との関係:保険者(健保)義務ではあるがペナルティやインセンティブがあるため、企業側は健保の実情を知り受診率を上げるために協力するような取り組みが必要。

健康保険の保険料率:基準としては経営者と本人が折半。
健康保険のサービス:健保ごとにサービスが異なります。法定費用は個人が3割負担。ただ付加給付によるサービスの違いがある。

保険者によってサービスの違いを考えてみることが、経営者として非常に大事であり、健康経営することが、非常に大事であると安倍氏。
元気な社員を作ることによって、医療費などの給付費が下がり、保険料を低くすることができ、健康経営に通じるとのこと。

ニーズにフィットしたサービスの提供を。

講演風景 健康と経営がどのように結びついているのかを、ワールド健保の事例を紹介しながら話を進められる安倍氏。
まずは、ワールド健保を例に保険料率がどれくらい下がったかを解説。この手法については、「健康経営のすすめ(岡田邦夫・安倍孝治 著:社会保険研究所)」で紹介されているとのこと。 企業経営者は、従業員を元気にし生産性を上げるのみならず企業が負担する保険料にも大きく影響することから、健康保険組合という組織を、大切なパートナーであると考えてほしいのだとのこと。
健保は運営基準、法律やルールがあるが、これからは運営ではなく、経営学であると安倍氏。
また、健康保険組合は英語に訳すと「インシュランス」となるが、これからは「ヘルス」にシフトするべきだろうと感じているとのこと。
保険料を低くしながらも、最高のサービスを提供することができるとのこと。それには、ニーズにフィットしたサービスを提供できることが重要だと安倍氏。

ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチ

健康保険組合の事業目的とは、医療費の適正化でであり、医療費を下げることではないとのこと。結果として医療費が下がることはあったとしても、医療費を適正化することが仕事と定義している。
効果的な保健事業、健康づくりとは、分析をして、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを組み合わせて行うのが効果的だと安倍氏。
ハイリスクアプローチは、リスクマネジメントを行い、アドバイスをするという保健指導が一例である。
一方、ポピュレーションアプローチは、いろんな保健事業、健康づくりを実施し、会社の中で健康が大事であるという風土を全体に広めていくことであり、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチをうまく組み合わせていくことが大切だと安倍氏。

健康管理の3要素「栄養」「運動」「休養」

講演風景 健康管理は、3つの要素があります。栄養、運動、休養があり、予防には、一次予防、二次予防、三次予防があるという。

一次予防:病気にさせない、病気にならないように、ポピュレーションアプローチをやること。
二次予防:病名が付かないように、保健指導を受けるとか、健診の結果、病気にならないようにすること。
三次予防、これは治療であり、お医者さんに行くこと。

一次予防では、健康づくりなのでさほど費用がかからないとのこと。そして二次予防では、行動を変えるということでハードルが高くなるので、「普通の暮らしをしましょう。」「普通のままで行くようにしましょう」ということ。一次予防が一番お金がかからないし、本人が行動変容するにも一番楽である。健康経営では、一次予防をしっかり行うことが大事だと安倍氏。
また、医療保険者と介護保険者は管轄が異なり、介護保険者は行政が管轄であるとのこと。将来、介護を利用するときのために、常日頃から行政任せではなく、現役時代から介護など地域の状況を知っておくことが必要であるとのこと。分からないことは行政に分からないと伝えることも大事だという。
ワールド健保では、健康づくりとして、まず食事に関する保健事業を始めたとのこと。運動はハードルが高く継続が難しいので、食事を動機付けの中心テーマとして取り組み続け、結果として一人当たりの医療費も下がってきたとのこと。
そこで、保険料率を下げようということになり、そこで健康経営を発見したのだそうです。

健康づくりをするときにスタンダードな方法がある

たとえば、国が健康日本21をはじめ、どんな施策を実施するとしても、次の4つをはずして、健康づくりの効果を上げようとしてもできないと思っていると安倍氏。

1:母体企業と一緒になって進める。
2:健康管理の役割分担を明確にすること。
3:健康の大切さの風土づくり。ポピュレーションアプローチをする。元気が大事。仕事も大事だけど、まずは体あっての仕事じゃないという風土づくり。
4:職域と地域の連携。地域に参加していくこと。

さらに、5番目に、健康経営マネジメント。組織マネジメントとしての健保組合内のマネジメントも必要だとのこと。

健康づくりは事業所ごとの風土づくりから

これには、3つの組み合わせが効果的です。
まず、広報誌やHPをつかって、健康が大切だという風土を企業内につくることが大変重要で、広く健康に関する情報を発信することが必要だそうです。
次に、最小限で最高の効果を上げるためには、事業所を巻き込んで事業所ごとに健康づくりをするということ。
事業所が主体になって、自分たちの問題だと思ってやってくれる環境、進め方をすること。
3つめは、個別相談など一対一の相談ができる。
この3つの風土づくりが必要だと安倍氏。

そして職域と地域の連携。

安倍氏は、健康づくりには企業、保険者、行政による連携が必要だと感じ、行政に働きかけ組織作りを実践しているという。
そうした活動を通して、地域の健康づくりに取り組む場を作りながら従業員、家族の健康づくりが、地域の健康づくりにつながっていくのだが、民間企業と行政の仕事の仕方が違ったり、価値が違うため、意思統一が難しいという。
しかし、健康づくりは、一緒に力を合わせないとできない。誰かがつながないと駄目だということで、信頼関係を作ることから安倍氏は取り組んでいるという。
地域連携イメージとして、協会けんぽ、国保、健保組合、集まる保険者協議会、あるいは地域職域連絡協議会などがある。地域連携の中では、ステークホルダーとして、パートナーとして存在するんだろうと安倍氏。

自分がやらなければ、誰もやらない。

マネジメントは非常に大事であり、運営より経営。保険よりも保健。なによりも当事者意識が大事だとのこと。
行政がやってくれる。健保組合がやってくれる。社長がやってくれる。保健師がやってくれる。誰かがやってくれると思っていても何も進みません。自分がやらなければ、誰もやらない。と安倍氏。

産業保険のプロを育てる健康経営研究会の活動とその効果

健康経営研究会では、産業保健のプロを育成するための活動を行っており、今後企業で活躍することを期待していると安倍氏。

活動内容
1.「健康経営」理念の普及
2.経営者の方への理解の促進
3.健康経営者(人材)の育成
4.産業医、産業保健専門スタッフの育成
5.健康支援事業者の育成
6.健保組合マネジメント論の普及

効果
1.優秀な人材が育つ。
2.優秀なアウトソーサーが育つ。
3.考え方が広がれば健康関連マーケットが大きくなり多くの企業が参入してくる。
4.社会全体の環境が良くなり、良い風土、仕組みで皆が健康で幸せになっていく。

経営者の働く人への健康意識。

健康は個人の問題ではなく、そのような環境になっていることが問題であり、経営者も一緒になって取り組むべきでだと安倍氏。
そして、保険者は、社会制度論、国の社会保障の歴史、医学などを学び、知識を持って、健康経営に対して、提案できるようになることが理想だとのこと。
さらに、地域行政の取り組みとしては、地域共生を目指し健康づくりに関する情報の発信と住民参加を進め、健康に関する意識を持ってもらうこと。
最後に、こうした地域を元気にするという職業がなく、コーディネイトする人がいないので、そういった人材を育てることが課題だと大学院での「保険者マネジメント学部」の設立にチャレンジしている安倍氏。


ヘルシーカンパニーからヘルシーシティ、ヘルシージャパンへ。健康経営は、地域の健康づくりであり、日本の健康と経済の活性化につながるのではないでしょうか。

▲ ページの上部へ戻る